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グローバル経済の下で,地域の盛衰が激しくなっている。かつての基軸産業は衰退し,成長の果実から見放された地域では深刻な過疎化に見舞われている。多額の補助金をつけて立地した大規模工場もわずか数年で売却されるという事態が起こっており,安定した暮らしを支える経済というにはほど遠い。かと思えば,人材や資金を世界中から集めて急速に膨張する都市が現れている。現代に生きる我々は,地域という容器の中でグローバル経済の荒波にさらされている。
しかし地域経済は単に受身であるわけではない。地域の中には,現状を的確に評価し,問題解決の手段を講じ,新たな発展の方向を模索する人々がいる。地域の企業は,単に利潤を追求する存在ではなく,社会に貢献し,技能を培う公器であり,他の企業や行政や大学研究機関等と協同して独自の発展可能性を切り拓く戦略的な経済媒体である。自治体は,単なる行政執行機関にとどまらず,地域の人々の生活を守るために,付与された権限内で独自の政策を工夫する創造的な問題調整機構である。近年では,社会的目的に従事する半公益・半営利の新しいタイプの事業や金融も,地域から創出されつつある。これらの諸主体の活動を通じて,グローバル経済に適応した新しい地域発展モデルが,世界中で次々と現れている。
以上のような,現代の地域経済の直面する課題や取り組みを,どのような理論で解いていったらよいであろうか。地域経済学は,地域の主体が,国際分業や国家権力など地域外の経済力に制約を受けつつも,独自の問題解決や長期的な発展を模索し実現していく過程や道筋を明らかにしようとする学問である。現代経済を読み解くキーワードとして,また,人々に実感される「豊かさ」を実現する発展単位として,「地域経済」の研究が重要になっている。本演習では,企業人,公務員,NPOなどを目指す学生を対象に,地域経済学の学習を通じて,地域の現場を踏まえた戦略的分析思考を訓練する。
3年次前期は文献研究,後期は「特別研究」として共同論文の執筆および他大学との交歓ゼミナールを行う。4年次は,文献研究と「卒業研究」および3年次への指導を中心にゼミ活動を進める。例年,地域経済システムの実態分析を共同研究テーマの候補としているが,ゼミ生と相談の上,ゼミ生の意向と自主性を尊重してテーマを決定したい。